第1回 鳥居みゆき×江戸川乱歩「芋虫」

【主催者 後記】
2026年3月。前々から温めていた企画を形にしようと心に決めた。「ひとり朗読」時代に逆行した取り組みかもしれない。でも、自分の為に、落語の為に、ことばの仕事を守るために、始めたい。初回はとても大事だ。ひとり朗読って面白い!と思ってもらえる旗揚げ公演にしたい。どなたに、どの作品を読んで頂こう? 諸々準備に3~4か月はかかりそう。初回を7月に決めた。
7月→夏→奇談→乱歩の「芋虫」だ!こんな難しい小説を、巧みに表現できる人は・・・?鳥居みゆきさんだ!芸人としてのユーモアと、俳優業で培った確かな演技力のある方。思い切ってオファーを出した。受けて頂いた。すぐにホールの使用料(大金!)も払った。かさむ経費。どうしよう。「いよいよ始まるんだなぁ」楽しみと、それ以上に失敗したらどうしようの怖さがあった。

準備は山のよう。ホールとの打合せ、チラシの発注、プレイガイドとのやり取り、出版社とのやり取り、台本の作成、印刷、郵送、集客・・・などなど。
6月12日(金)サンミュージック本社にて、リハーサル。参考資料として、私が読んだ「芋虫」の動画を鳥居さん事務所に事前に送っていたが、既に何度も観て頂いていたようだ、ありがたい!実際に読んで頂き、時間も測る。60分。リハの時点で、とてつもない完成度。こちらからのリクエストをお伝えさせて頂く。「ユルス」など「仕草」を加えていき、「時子」を更に高めていく。みっちり2時間のお稽古に付き合って頂いた。鳥居さんの素晴らしい朗読を沢山のお客さんに観てもらいたい。あと1カ月で幕が開く。

不安な日々の中、大きな追い風が。私の考えに共感して頂き、毎日新聞社様が取材をしてくれた。7月8日の紙面に掲載。ひとつ報われました!
ここで、「渋谷ひとり朗読」誕生経緯について。私は、元テレビマンで、脱サラしてこの世界に入ってきた。映像の世界からことばだけの世界へ身を移し9年目。ことばだけの方が、映像の制約が苦しくなく、表現の幅も広く、様々な景色を投影することが出来て、とても貴い仕事だと日々感じております。
一方で、「ことば」の仕事は、この先も残り続けるだろうか、という不安も。もちろん演芸も本も活字も大好きなので、残って欲しい。でも、電車の中を見渡すと、スマホの画面に集中して、ショート動画等を見ている方が大半。活字が遠のいていく。そりゃぁ本屋も少なくなっていくし、新聞の購読者も減っていく訳だ。
「ことば」の娯楽(例えば、読書・新聞・落語・講談・浪曲などの演芸・・・etc)の難しいところは、聞き手・読み手が能動的でないと成り立たないところ。なんとなく受け身、では楽しめない。そうは言っても、こんなに面白い世界なのだ。少しでも、社会貢献出来ないかしら。ことばの楽園の入り口のような空間を作れないだろうか。気楽なことばとの接地面を作れないだろうか。ということで「渋谷ひとり朗読」を立ち上げました。朗読「劇」ではありません。「劇」のように、音響・照明・映像などの演出を一切加えない、キャストひとりだけの会。足せば足すほど大衆に届く。でも、引いて引いて、純粋にことばだけの素材の味を存分に浴びる会。
「朗読はひとりで読むからこそ面白い」演芸で想像の準備体操をするから、ひとり朗読に没入出来るし、ひとり朗読があるから演芸も活かされる、互いに必要不可欠で高めあえる会。
わかりやすいエンタメがトレンドの現代社会に抗うような取り組みなので、正直退屈で物足りなく感じる方もいると思いますし、テレビでいったら幕の内弁当的な地上波ゴールデン老若男女向け番組ではなく、一匹まるごと鮭弁!的な刺さる人にはぶっ刺さる専門的BS番組のような会ですが、何もない空間に何もかもが見えてくる、その贅沢な想像体験がマスに広がっていくと嬉しいな!という願望と期待も込めて、こんな会を立ち上げました。 と、取材でお話した内容はざっとこんな感じです。50代ベテラン記者さんが取材してくれたので、とりとめもない私の話を、綺麗にまとまった素晴らしい記事にして下さいました。

7月9日 新聞記事をひとりで読むのが怖かったので、レンタルなんもしない人と一緒に読む。黙々と読むレンタルさん。ひたすら黙々と読むレンタルさん。ひたすらひたすら黙々と読むレンタルさん。「素敵な取り組みですね」と言って下さった。鳥居みゆきさんと同世代でファンとのこと。仕事が入らなければ当日観に行きますとのことだったが、仕事が入ってしまい、当日は来られなかった。また、次回以降、是非、お越しくださいませ。

迎えた7月24日(金)いよいよ本番。朝からずーっとふわふわしていました。無駄に近所をお散歩したりして。緊張してましたね。楽しんで頂けるだろうか・・・杞憂でした!
この会では、とは言ってもいきなり「ひとり朗読」は難しいので、前半に「演芸」後半に「ひとり朗読」と、段々とことばの世界に入り込める構成にしております。
人生初落語のお客様が半分以上でしたが、前半、一花姉「みそ豆」扇七「藁人形」で、想像の準備体操。そして後半は、鳥居みゆきさんの「芋虫」。鳥居さんの全てを見逃すまいと客席の集中力が加速度的に高まっていき、息をのんで小説の世界に没入しているのが伝わりました。勿論可視化出来ませんが、鳥居さんの放つひとつひとつの言葉達が、空間をかたちづくって、輪郭を鮮明にしていくよう。リハより遥かに何段階も高めた本番のパフォーマンス。完全に場を掌握されていました。
読み終えた後、少女のようにはしゃぐ鳥居さんの解放感と共に客席からの大きな拍手。お楽しみ頂けたようで本当に良かった。私も一気に肩の力が抜けました。ふー。大変だったけど開催して良かった。どっと疲れが出て、翌日25日、主催者は風邪で一日寝込みました。

衣装についても、少し記します。作品の時代や雰囲気に合わせて、また作品と同化する為に、着物で読んで欲しいとお願いをしたのは、主催側。でも「はだし」で読みたいとアイデアを出してくれたのは、鳥居さん側。母屋と離れを行ったり来たりする「時子」の世界は「はだし」の方が表現出来ると。ナイスアイディア。お客様には見せられないけど、鳥居さんの台本にはびっしりと書き込みが。「この台本は捨てないで取っておきます」と。細部の細部まで作りこんで頂きました。大大大感謝!

春風亭一花姉さんは、前座の頃から大変お世話になっておりました、今秋・真打に昇進されます。人生初落語のお客様が多い会でしたので、昇進直前のお姉さんに少しでも恩返しが出来ないかと思い、お声がけさせて頂きました。本当にありがとうございます。また、柳家しろ八さんにもお手伝い頂きました。仲間は心強い。ありがとうございました!

定期開催する会ですし、思い切って受付スタッフユニフォームを作りました。可愛い。運営スタッフの皆様、お疲れさまでした。ありがとうございました。

ロゴステッカーも作りました。旗揚げ公演では、一人一枚、お客様全員にプレゼントしました。可愛い。

誕生経緯と当日までのストーリーを記しました。改めまして、第一回旗揚げ公演にお越し頂きましたお客様、本当にありがとうございました。
さて、次回、9月10日(木)は二本立てのスペシャル回です。中村静香さん、東留伽さん。次回も素晴らしい会になるように、準備を進めて参ります。ことばを浴びる会、渋谷ひとり朗読を、今後とも、どうぞ末永く宜しくお願い致します!ここまでお読み頂き、ありがとうございました。代表・入船亭扇七